2017年3月12日日曜日

文系院卒は貧困の始まり

 ネット上を見ても否定的なことばかり書かれていますが、実際に、文系院卒は学部卒に対して、金銭面においては大変不利な生活を強いられています。
 今回はその実態について語ります。

 私自身も文系の院を修了し、大学で非常勤講師として講義をしています。
 給料は、一コマ90分あたり6000円。交通費などは自腹です。
 レジュメ制作に半日ほどかけていますから、単純に時給換算するとコンビニのアルバイトをしているのと同じか、それより低い給料で働いています。また、大学が僻地にあることから、電車代など往復で1000円ほどかかります。
 つまり、半ばボランティアとして講義をしているような感じです。
 研究者生活をしていると教歴が重要になりますから、その箔付けのためにやっています。
 もちろん講義に必要な書籍代などは自分で支払っています。
 院の研究など好きでやっているのだから、と言われればそれまでですが、割に合わない仕事だと感じています。

 知人の話に移りましょう。
 私の知人、仮にAとしておきます。Aは名門の中高一貫校を卒業した後、大学は東大受験に失敗し、慶応大の法学部に進みました。
 当時は2000年代、法学部では法科大学院進学がブームでした。東大受験に失敗した彼は、そのコンプレックスから抜け出せず、ふたたび東大の法科大学院を受験しました。けれどもまたも敗れ、中央大の法科大学院に進学しました。
 この頃、故郷の親が体を壊し、奨学金を借りるようになりました。
 法科大学院修了後、二回目の受験で司法試験に合格しました。学費さえままならないまま、伊藤塾などの司法試験予備校に通うあいだに借金はみるみるうちに膨れ上がっていきました。
 司法修習が終わったあと、Aは弁護士として働くことになりました。体を壊した親のため、田舎に帰って独立(即独)したのです。
 けれども、当時はすでに弁護士事務所の乱立時代で、ほとんど仕事はありません。年収も400万円ほどで、高校時代の同期の高い年収と自分を比較し、さらなるコンプレックスに悩まされることになります。借金も事務所開業費用を合わせて1000万円を超え、その返済をするのでやっとの暮らしが続いています。
 やがてAは鬱病を発症し、無気力な日々を送っています。後に残ったのは借金だけ。慶応大卒業時に新卒として就職したほうがどれだけ楽だったかと嘆いています。

 文系院卒の苦悩はこれだけではありません。40歳を超えても非常勤講師のまま、不安定な暮らしをされている方が山ほどいます。
 非常勤講師に就けたのはいい方で、博士号取得後、まったく関係ない肉体労働に就いている人間もいます。 Aの周りの法務博士たちも、司法試験不合格だった人々は行方不明、生きているかさえわからないと言います。
 暗い話が続きましたが、これも現代日本のひとつの側面なのです。
 文系において院に進学するのはハイリスク・ローリターンです。これが法科大学院の不人気、予備試験から司法試験を目指す人が増えている要因のひとつです。
 金銭的に余裕がないかぎり、学部新卒で就職しましょう。